製品開発プロセス

<医療機器製品開発のプロセスについて>

1.試作検討

1-1.何を作るか
ものづくりの出発点は、シーズ(seeds:種(新しい技術など))かニーズ(needs:必要性)が出発点になりますね。
例えば、シーズなら、パソコンが小さくなった、というシーズの技術があれば、高性能ロボットが作れるから作ってみよう、です。
ニーズなら、パソコンに水をこぼしたら壊れた、という問題があれば、水をこぼしても壊れないパソコンがニーズになるのでは、です。
どちらでもいいわけですが、ニーズがあると売りやすくなるわけなので、シーズは研究段階であり、ニーズが開発段階といえるかもしれません。

1-2.設計開発と規格の試験(非臨床試験)
試作品を作ったら、目的とする機能が達成できるかを確認しますね。
たとえば、皮膚を切る、という機能なら、切れなければ意味がないわけですから、まず切れるかどうかを確認するでしょう。
ここまでは、医療機器に限らず、どんな製品でも同じですね。

そして、医療機器の場合は、臨床試験がある、ということが特別です。
製品開発のプロセスは大きく分けると、臨床試験の前後の段階の開発があり、まずは臨床試験前の段階になります。

医療機器の場合は、その製品に適用される規格をすべて調べて、適合していることを証明して文書に残しておかなければなりません。
この作業は、どんな製品でも同じですが、医療機器でなければ、確認は必須でない場合もあるでしょう。
しかし、医療機器の場合は、必須となるわけです。そのため、規格の試験を平行して実施しないとなりません。

医療機器の試験の規格は、以下の大きく3つに分類できます。これは、必須の項目になりますので、この試験がない医療機器はありません。
いわゆる医療機器の法律の中で、必須要求事項の基本要件というものがあり、この対応が必要となるからです。

(1)性能試験(強度など製品の分類に応じて要求される試験)
(2)安全試験(使用者の安全に関する試験。主に以下の3つがある。)
・生物学的安全性試験(毒性など生物に与える影響を確認する試験)
・機械安全性試験(使用時のけがなどの安全性に関する試験)
・電気安全性試験(感電などの電気に関連した安全性に関する試験)
(3)安定性試験(保存など有効期限に関する試験)

この試験をやらなければならない、という記述がどこかにあるわけではないので、わかりにくいです。
しかし、規格を調査すると、これがでてきて、やらなければならないことがわかります。
たとえば、毒性について検討すること、のような内容があれば、生物学的安全性の規格の試験をしないと検証できない、となるわけです。
生物学的安全性の規格試験をすること、という記述にはなっていませんが、規格試験をして証明するしかない、ということになります。

特に医療機器に特有なのは、安定性試験です。病院で使用するときに無菌であることが要求されるので、製品の機能性と合わせ無菌性の維持がされているか確認する試験が必須となります。
そして、この無菌性が維持される有効期限を決める試験を、安定性試験と呼んでいるので、安定性試験、というと業界では当たり前のことになります。
そして、この試験方法は、厳密に決まっていますので、規格の通りに実施しなければなりません。
簡単にいうと、10年という有効期限を設定しようとした場合、10年を実際に放置して確認しなければなりません。
しかし、10年も待つのは難しいので、加速試験という方法が設定されています。
これは、アレニウスの法則を利用した原理で、簡単に言えば、温度を上げると加速する、というものです。
この加速試験をすると、放置期間を10分の1ぐらいにできるので、1年になります。
この加速試験と実際の期間の10年の試験を同時に開始して、加速試験の結果がでれば、この有効期限を設定して、量産が可能となります。
もちろん、10年がたつまでに問題があれば、修正などをしないとなりませんが、加速試験で結果を判定できるようになっています。
このやり方は、規格に書いてあるので、そのまま実施することになります。
この加速試験が、妥当かどうかの疑問はあっても、規格で証明できるのです。
逆にいえば、この規格の試験をやらなければ、有効期限の妥当性の証明は不可能といっていいでしょう。

これらは、規格で細かい点まで決まっているので、そこを理解して必須事項に適合しているか確認する必要があります。
判断が難しい部分もありますが、とにかく必須事項を実施しなければならない、ということになります。

そして、これらに関連して、製品への表示や包装への表示、包装方法なども、自動的に決まっていくことになります。
仕様が細かくなり、すべての適合項目へのチェックは、非常に煩雑となります。
また、製品は多岐に渡るので、判定は個々の製品にゆだねられている場合も多いので、規格で決まった通りにやればいいわけでもありません。
参考の規格も多く存在していますので、とにかく必須事項(英語表記なら、shallという助動詞がある文)がなにかを理解しておかないとなりません。

1-3.臨床試験
臨床評価とは、人体による評価試験です。これは医療機器の開発の大きな難点です。。
人体に実験する場合、医療機関、医師、患者などの協力がないとできませんから、社外の協力体制がないとできません。
ものを作っただけでは、医療機器は開発できないということです。

1-4.申請
上記に関して、決められた資料を準備して、行政機関への申請を行い、承認をもらわなければなりません。
申請の際に、QMS(品質マネジメントシステム、国際規格のISO13485など)の適合は必須になります。
申請時点で、ISO13485の認証を取得していれば、問題ありません。
そうでなければ、同時に認証を取得する形になります。
ISO 13485の認証がなくても、審査を受けて合格すればよいですが、ISO 13485と同等の内容を確認されることになりますので、
運用は、ISO 13485と同じ形で実施されないとならない、と理解した方がいいでしょう。

そうしなければ、上市(じょうし、市場に製品を流通させること)ができません。
量産を開始する前に、承認をもらわなければなりません。

2.量産化
申請をクリアしたら、量産化となりますが、品質マネジメントシステム(ISO 13485など)に従い製造しなければなりません。
そういった品質管理をしていないと、製造販売の許可がおりないことになります。
したがって、品質マネジメントに従った文書管理(製造管理、品質管理、安全管理など)をしていないとなりません。
そういった文書や手順を整備して、量産体制を整えないとなりません。
使用する設備について、プロセスバリデーションという試験をしないとならないことも、医療機器の特有の対応となるかと思います。
単純には、ISO 13485の認証をとれるレベルにないと量産をするのは、厳しいということになります。

この量産化が、どんな製品でも難しいことですが、3つの用語がでてきますので、覚えておかないとなりません。
デザインベリフィケーション(設計検証)、デザインバリデーション(設計の妥当性確認)、プロセスバリデーション(工程の妥当性確認)です。
この量産化の前までは、ベリフィケーションで、この量産化から、バリデーションになります。
まず、量産設備について、プロセスバリデーションをしなければなりません。これをしないと製造できません。
その後、量産設備で作った製品で、デザインバリデーションをしなければなりません。これをしないと量産開始できません。
ですので、量産化できても、そこからすぐに量産開始とはならず、かなりの試験確認が必要となります。

3.市販後調査
PMS(Post Marketing Surveillanceの略)と呼ばれているもので、販売された後に行われる、品質、有効性および安全性の確保を図るための調査のことです。
これも法律で決まっているので、実施しなければなりません。
医療機器の種類によりますが、販売後の決められた期間後(3か月など)、定期的に、調査結果を行政機関に報告しなければなりません。
不具合などの情報を決められた形式で調査し提出しなければなりません。
医療機器の法規制では、市販後の対応があることから、プロセスの中で市販前、市販後という言い方をします。
そして、医療機器の開発では、プロトコル、という言葉もよくでてきます。これは、計画書のことです。
品質マネジメントシステムで決まっていることですが、必ず、計画をして計画書にまとめてから、実施することになります。
したがって、これを実施するにあたってのプロトコルは?ということが確認されることになります。